黒部ダムカレーと地域ブランド その3
黒部ダムカレー事務局の松澤です。
また、前回から時間が経過してしまいました。
前回では、大町市において「ダム」がいかに重要なものか、だからこそ地域のアイデンティティになりうるものだと説明しました。
ここで、黒部ダムカレーに話を戻します。
やはり気になるところは市内に建設されている3つのダムを取り上げるのではなく、なぜ大町市の行政区の外に位置する(それも県外の)“黒部ダム”に力点を置いたのか?または置けたのか?という点だと思います。
知名度が高いから?たくさんの観光客が来るから?もちろんそれらを否定することはできません。でもそれだけではないということをご理解いただきたくて今回少し掲載させていただくことにしました。
確かに大町市の高瀬渓谷には上流から高瀬ダム、七倉ダム、大町ダムと3つのダムが建設されており、地域の治水・利水・治山・砂防などにおいて重要な役割を果たしています。では黒部ダムはといえば、行政区が異なるとはいえ、ダムへ通ずる入り口として、建設当時はもとより立山黒部アルペンルートとなった現在に至ってもとても深いつながりがあることに変わりありません。いずれにしましても、市内3つのダムと黒部ダム、これはすべて地域に取ってとても大事なものであることに疑いはないのです。
ではなぜ、黒部ダムカレーなのか?たしかにこれまでもご批判をいただいてきました。黒部ダムは大町市はもとより長野県ではないではないかと。
ここでまずご説明しなければならないのは、今回の取り組みは、あくまで地域にブランド価値をつけていくためのものであるということです。そのためには何が重要で何が必要になるのかを整理していかなければなりませんでしたが、今回は特に“独自性”、“正統性”、“ブランド認知”、以上3点に留意しています。
まず独自性についてご説明します。地域の独自性という点で“ダム”を選択したことについては、前回の“その2”で少し触れさせていただきました。北アルプスの麓であること、山、川、水など豊富な自然に恵まれていることなど地域として優位な点を有してはいますが、ではそれではほかの近隣地域はもとより全国にも同様の地域があることから独自性としてはいまひとつ弱い・・・そこでそれらを “ダム”という言葉に落とし込み地域の独自性を図るようにしています。
次にブランド認知についてです。
でも、突然そんな言葉を登場させられても戸惑いますよね。言葉足らずの説明かもしれませんが「あっ、知ってる!」とか「このカテゴリーならやっぱりこれ!」などと、何か手掛かりをもらうことで、ある商品を正しく識別できたりすることだとご理解ください。やはり商品との最初のコンタクトをとってもらううえでも、一定の知名度、そしてそのきっかけは絶対必要ですからね。
ここでご自分を消費者に置き換えて、購買プロセスを考えて見ましょう。ご自分がお店にあるものを買う際に、基本的に名前を知らないものに対してお金を出して買うことはありませんよね。このように消費財の購買プロセスにおいても、まず、消費者がその商品名を知っているという点が第1ステップになるんです。次のその商品が自分に対してどのような効用があるのか、どんな便益をもたらすのかなどの理性的な反応に移っていくわけですが、それはともかく、商品の提供側からすると、勝負の土俵に登るというか、まずバッターボックスに立つには消費者からその商品の名前が知られているということが極めて重要な要素になるわけです。
確かに大町市に建設されている3つのダムは、ダム本来の目的をしっかり果たしているとともに、ひとつの建築物としても、そして地域のアイデンティティをあらわすものとしても大変重要なものであることはあらためていうまでもありません。さらに市内にある3つのダムのポテンシャルは、資源価値はもちろん魅力度などからいってもきわめて高いことを強く感じています。しかし、残念ながら知名度という点では残念ながら黒部ダムには及ぶべくもないのですね。
地域にブランド価値をつけるため、その第一段階として、まず地域の知名度向上を図る。その効果的な手法として、
【ブランド想起機能に着目し「“有力な地域資源”と“地域そのもの”を消費者意識のなかにつなげることで、地域の認知度を向上させる」】というコンセプトを掲げています。
有力な地域資源として、すべてのダムはもちろんそのカテゴリーに属していることは明白なのですが、ブランド認知という点から黒部ダムが選択されているということです。
そして最後に正統性について。
地域のブランド価値を上げていくことを考えている以上、そこに地域としての正統性は必ず必要になります。では大町市はもとより長野県に属していない黒部ダムというものが果たして大町市側から正統性を説明できるのか?この点はきちんと整理しておかなければなりません。
これまでもご紹介してきたとおり、黒部ダム建設当時における当地域との関わりはもとより、実はこの黒部ダムカレー、昭和40年代初頭から扇沢駅大食堂(現在のレストラン扇沢)において“アーチカレー”として40数年間提供されてきたという歴史があるんです。さらに現在でも当市の観光部門は関西電力様と連携して黒部ダムの観光PRを継続して実施されています。(ですので、黒部ダムカレーの提供にいたっては、関西電力様のご理解、ご尽力がなければ到底実現するものではありませんでしたが)これらのことをふまえていただきますと正統性という点についてもご理解いただけるかと思います。
また、ぜひここでお考えいただきたいのが、ブランドは送り手だけが作り出すものではなく“受け手とともにつくられるもの”(最終的なイニシアティブは受け手にあるかと思いますが)だということです。いくら行政区という境界線で区切ってみたところで消費者たる受け手にとって地域特性が同様であれば、現実的には彼らがイメージする地理的範囲は行政区という境界をいとも簡単に超えてしまうわけです。このようなこともあり、正統性がきちんとケアできるのであれば、ブランド構築という観点からも地理的範囲をあえて行政区で区切るのということではなく、地域イメージを優先させるという選択をしています。
また、長くなってしまいました。続きはあらためて。